夏野清太郎の記録

いっしょにこの時代をなんとか生き延びよう。だいたい仕事の話をします。

僕はセクハラ上司だった。

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社会人一年生の皆さんこんにちは。夏野清太郎です。

「#社会人1年目の私へ」という企画がやっているので、当時の社会人一年生だった私や、今社会人一年生のみなさんに向けて書きたいと思います。

10年前、僕が自分の会社をやっていたころの話です。社会人一年生時代は持っていなかった権力をいつの間にか持っていたことに無自覚だった時期の話です。僕の「失敗」であり、失敗であるがゆえにきっと参考になると思います。

僕はセクハラ上司だった

大学卒業後、3年ほど制作会社(ブラック)でWebデザイナーとして働いたあとフリーランスを経て、僕は大学時代の友人たちとデジタルマーケティング会社を立ち上げました。それはデザインやプログラムを行う制作部門と、そういった制作案件を広告代理店や、事業会社から取ってくる営業部門に分かれていて、僕は制作部を担当する取締役でした。社員は10名ほどで小さな組織だったけど、間違いなく僕はその組織の中で偉い人間でした。

ある年に新卒で営業部に女子社員が入社してきました。九州から上京してきた、少しぼやっとしたはなし方をするかわいい女の子で、僕は彼女に恋をしてしまいました。一瞬で。当時僕は29歳でした。

彼女がとってきた客先に打ち合わせで同行をするあいだ、移動中にいろいろ話すうち、彼女はどうやら大学時代に講師と付き合っていて、その彼氏の東京赴任を追いかけて、東京に来ているらしいと知って、いろいろと合点がいきました。どう考えても彼女は「自分のキャリアをぐいぐい伸ばしていきたいです!」といったタイプではなかったのです。うちの会社は零細企業なので、なぜ入社したんだろうと疑問だったのですが、彼女にとっては東京にいけるということが重要で、会社を選り好みはしていなかったのです。

そんな移動中、映画の話題になったこともあり、僕はだめもとで、休みに二人で映画に誘ってみました。彼氏がいるとかはあまり気にならず、とにかく彼女と少しでも親しくなりたかったのです。

メールで誘ったところ即レスでOKの返事が来て、休日にとしまえんで二人で映画を見ました。邦画のミュージカル作品で変わった映画でした。映画館を出てお茶していたら、彼女が「せっかくのとしまえんなんで遊園地のほう行きませんか?」と誘ってくれました。その日の午後は、遊園地でいろいろ乗り物乗ったりしてあそび、夕方、そのまま解散しました。

そのあとくらいから、仕事中のランチはきまって一緒に行くようになり、3ヶ月くらいたったころ、僕はうやむやな関係をどうにかしたくて彼女に告白しました「つきあわないか」と。

ここまでの話を読んで、すでに「ドン引き」している人と、「あれ?いけんじゃね?」となっているひとに分かれているのではないかと思います。そう願いたい。すくなくとも当時の僕は可能性あるのかなと思っていました。

ちょっと時間をくださいといわれて、数週間後、結論としては「難しい」という返事をもらいました。やはり今の彼のことを大事にしたいと。「二人で出かけたり親しくしたのは私の不注意だった」誤解させたとおもう。すいませんでした、と。

この瞬間、僕は自分がセクハラ当事者であることに、ようやく気づいたのでした。彼女にとって僕は仕事上の上司だから、誘いも断りにくく、親しくしておいたほうが仕事もやりやすいため、ランチをともにしていただけなのです。僕はとんだ勘違い野郎だったのです。

僕は彼女に謝り、その後、仕事上はいつもと変わらない関係にもどりました。僕は二度とプライベートで会わないよう私的な連絡を絶ちました。

しばらくあと、彼女はその彼と結婚することになり、会社をやめていきました。僕はそれから社員との交流を、業務に関するものだけに、意識的に制限していくようになりました。いまでも職場のつながりを濃くすることには慎重になります。異性はもちろん、同姓でも。

セクハラをしないために、セクハラにあわないために。

世のセクハラ記事を見るにつけ、このときの体験がうずいて罪の意識に憂鬱になります。新聞記事で見かけるセクハラ当事者は、どうしようもない人たちですが、僕だって彼らと同じ線路に乗っていたわけで、彼らの少し手前で止まれただけのことなのです。

僕は自分の立場に無自覚だったし、手前で止まれた気になっているだけで、彼女は「いや、私、轢かれましたけど?」と思っているかもしれません。

僕が社会人1年生に伝えたいのは、セクハラをしないように「自分の持つ権力に自覚的でいてほしい」ということと、セクハラ被害にあいそうなときには「相手が自覚無くやっている可能性があり、まずセクハラだと気づかせる必要がある」ということです。こちらは当事者間ではなく第三者をはさめる会社内コンプラ窓口とかに相談するのが良いと思います。

※僕の会社には当時コンプラ窓口はありませんでした。